さて今回は、私たちがガイドさせて頂きました際の、お客様との会話を交えた体験談を、皆様にお伝えします。
N様(栃木県那須で木材業を営まれている方)との会話
その1、彦根城博物館をご案内していました際、大名のお宝についての説明にうなずいておられたN様が、館内にある御座間を見られて、「この部屋は素晴らしい」と発せられました。材木のプロが「素晴らしい」と言われるのは何だろうかと思い、「何が素晴らしいのでしょうか、お教え下さい」とお聞きしますと、N様は「この部屋に使われている材木には、全然節目が有りません」、「節目のない材木というのは、丸太の中の中央部しか使いませんので、ぜいたくな材木の使い方です」、「桂離宮の部屋と同じです」と話されました。なるほど、プロの見方は細部に目が届くものだと感心しました。

その2、彦根の城下町、善利組足軽屋敷跡を通り抜け、芹川に出ました。芹川は彦根の城下町を作るために、曲っていた流れを真っ直ぐに付け替えられた川で、両岸のケヤキ並木は、市民の散歩コースとして愛されています。このケヤキは樹齢400年近い大木であり、幹の太さといい、樹相(こんな表現はありませんが、人相と同じに例えました)といい、申し分なく、彦根の誇れるものの一つだと思い、案内をしました。
すると、N様が、「こんなケヤキは見たことがない、相当昔からいじめられているケヤキですね」と驚き、「普通のケヤキは幹から真っ直ぐ伸びて、地上から高い所で枝分かれしていますが、このケヤキは低い所で枝分かれしています」、「木が伸びる前に枝打ちされ、上に伸び成長するのを、押さえられたからです」、「それも長い期間かけて行わないと、この様な奇妙なケヤキは育ちません」と。………材木のプロは違うなと感心しました。
それから直ぐに、ケヤキの幹の根元の太さと、地上から1m位の所の幹の太さの違いを見つけられ、「これは何故太さが違いますか?」、「普通ケヤキは地上に近い所ほど幹周りは太いものですが」と。
「そうですね!大雨の際、城下町を助けるために、西岸の高さを低くして、西地区側に水を流していました。その後、土盛りして両岸の高さを合わせました。その時から幹の太さが違うと言われています」とお答えしましたが、木一つにも、その道のプロにとっては歴史があり、そこに文化的な価値があります。そしてまた、護岸についての長年の努力が、見事な「樹相」を作り上げたのでしょう。

この彦根の歴史と文化を守り育てて来た先人の努力と技術を、皆様にお伝えしたいと思っております。私たちがガイドさせて頂くお客さまの中に、その道のプロが多くおられて、私たちが教わることも、また多くあります。そんなプロの方を通して見た彦根の良さを、これからもお伝えしたいと思います。